悪魔の囁き、その9。風評被害と安全策。

今朝は2時前に起きて、
ホームページの手直しをしている。
5/15から自粛解除となったので、
最新の釣果をアップできるように、
ファイルをちょっといじっていると、

いつの間にか現れた悪魔が小さい声で囁いた。

’もう最新釣果は掲載するのかい?’

あぁ、もう自粛解除だから、集まってくる最新釣果は
掲載するつもりだ。

’それがいい。自粛、自粛もストレスがたまるし、
ストレスがたまったら動物的にも弱くなるので、
簡単にコロナに負けるぜ。
できるだけ皆さんが、
発散できるようにしたほうがいいよ’

続けて、

’でも、コロナが流行り始めた頃は、
ずっと最新釣果を掲載していたから、
ずいぶん危ない橋を渡っていたんじゃないかい?
気がつかなかっただけかもしれないけれど’

などと悪魔がいうので、
ちょっと前の状況を振り返ってみると
確かに自粛ムードが高まった後でも、
お構いなしに最新釣果を掲載していたから、
真面目な方にとっては、
とても目障りだったかもしれないね。

’抗議が2件ほどあったんじゃない?’

悪魔のいうとおりだ。
自粛しているのに、
最新釣果を掲載するのはけしからん。
そういってきた方が、お二人ほどおられたね。

’それでどうしたんだっけ?’

オイラはその時すでに、
今回のコロナ騒動はたいしたことがないから、
そのうち収まるので知らん顔して、
ほっておこうと思っていたのだけれど、

自分が思っている以上に、
事態を深刻にしたい力が働いたようで、

ヨーロッパのように都市封鎖=ロックダウン
とまではいかなかったけれど、
東京や大阪では、
けっこう厳しく自粛していたようだね。

そのため、大阪からお一人、東京からお一人、
最新釣果の掲載を控えるべきだと抗議がきたんだね。

’抗議が来てどうしたんだっけ?’

オイラはそのまま掲載するつもりだったんだけれど、
なんだか心配になったので、
お二人の方にお知恵をお借りした。

お一人はメーカーの営業部長さんで、
どうしたらよろしいでしょう?
などとアドバイスをお願いしたら、

「非常に難しい問題ですね。
弊社では、営業マンの得意先訪問を見合わせておりますが、
それは風評被害にあわないようにとの配慮です。
道具屋おやじさんのところも、
自粛されたほうが波風が立たなくてよろしいのでは」
ということだったね。

さすがに苦労人の営業部長さんだ。
アドバイスは身に沁みたよ。

’もう一人はお医者さんだったっけ?’

そうご常連のお医者様で、
ご返答いただいたメールにはこう書かれていた。

「大変な状況で心配しておりますが、
ラストホープは、僕がフライフィッシングを始める
きっかけを作って下さった
大変大切なお店です。
文字通り、僕のラストホープです。
どうか、ご自愛頂いてください。 」

’これでもう心は決まって、
すぐに最新の釣果掲載を止めたんだったね。’

と悪魔がいうので、

そうそう、先生にこういわれて、
有難いお言葉だなぁと泣けてきたんだね。
それでオイラも意地を張るのを止めたんだよ。

1ヶ月ぐらい前のいろんなことを思い出しながら、

やっぱりうちの店は、
いいお客様や取引先に恵まれているよ。
おかげで風評被害もなく何とか乗り切れそうだ、
と悪魔に言ってみると、

悪魔も嬉しそうにニコニコしていた。

変な奴だなぁ、
悪魔って、普通は他人の不幸を願うのじゃないかねぇ。
うちに来る悪魔はちょっと変わっているよ、
こいつ、本当に悪魔なのかねぇ?

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-お断り-
この話はすべてフィクションで、
たまたま見た夢を綴っただけのことです。
外出をオススメしているわけではありませんので、
念のため。
なお、この物語は当分の間、続きますが、
すべて実在の人物、会社、組織とは関係ありません。
どうぞご承知おき下さい。