その昔、
といっても30年ほど前だったかな。
うちの店を始めたのが1994年で、
そのちょいと前、
まだサラリーマンだったころの話。
フライロッドメーカーは、
新興のSAGE(セージ)がずいぶん力をつけていた。
道具屋オヤジも、
スコット、ウィンストン、カプラスなど、
いろんなロッドを持っていたのだけれど、
そのころ、一番好きだったのが、
セージの4711LL。
7’11” で #4 指定のこのロッド、
スペックが岐阜の渓流にぴったりで、
しょっちゅう使う大事な相棒だった。
アクションはちょいとしなやかで、
フライをプレゼンするときも、
また魚を掛けてからも、
とても気持ちの良い曲がりをしてくれる。
キャスティングはテンポ良く打って行けるので、
遠いライズを狙う時も、
手前の岩のワキを狙う時も、
とてもリズムが良い。
遠投能力もあって、
堰堤の下や広いプールを狙う時でも、
20ヤードぐらいなら短いフォルスで充分に届くので、
いろんな場面で本当に重宝するロッドだった。
素材のグラファイトⅡの良さが全面に出ていて、
銘竿とはこのロッドのことか、
と思うくらい気に入って使っていた。
ところで、
アメリカのフライロッドメーカーの、
もう一方の雄、
オービスにはセブンイレブンという名竿があって、
これは、オービス特有のどてっとしたアクションが
好きな方にはたまらない魅力だった。
ゆったりと釣るのがお好きな方は、
皆さん、こちらを選ばれたんだよね。
道具屋おやじは、
どちらかといえば切れ味鋭いロッドが好きだったので、
セブンイレブンが流行っていた時にも、
ダイヤモンドバックやゴールデンシャドーを
好んで使っていたのだけれど、
たぶんそれは若くてせっかちだったから、
一刻も早くフライを水面に届けたい、
そんな思いで早めのアクションのロッドに
手が伸びていたのだろう。
けれども、
年を取ってのんびりと釣りたい今となっては、
きっとオービスのセブンイレブンの良さが、
分かってくるのじゃないか、
などと思ったりする。
もちろんセブンイレブンは今はないし、
また若い頃に好きだったセージの4711LLも、
その後はグラファイトⅢに素材が変わって、
がっかりしてしまい、
そのせいか、
店をオープンする時に、
うちはメインをスコットで行こうと思ったので、
手持ちのセージはすべて処分してしまった。
この時の、
店が向かう方向を決めたのが、
良かったかどうかは分からないけれど、
おかげさまで店は今年の6月で、
26周年を迎える。
スコットにもずいぶん可愛いがって
もらっているので、
店の中を流れている空気は、
いまだに創業当時のままで、
ずっと変わることはない。
でもここのところねぇ…