KIHADA SHINKUROの秘密、その2.
2007/07/17


残念ながら前回は釣れませんでした。
早朝の雨脚がとても強くて泣く泣く撤退、
来週こそ必ず尺を釣るぞ、帰りの車中でリベンジを誓います。

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前回ご紹介したキハダ君、
職漁師の知恵を拝借してバジャーのハックルを使うようになってからは、
ずいぶん釣果が上がるようになりました。
日中の釣り上がりはもちろん、イブニングで使っても、
尺を越えるサイズのイワナやアマゴを誘い出してくれますので、
その結果には満足していたのですが...

実はテールの素材に良いものが見つかりませんでした。
大き目のドライフックに使える、長くて張りのある素材、
いろいろ試したのですが、なかなかこれはというものが見つかりません。

その昔、メッツのハックルが全盛だったころ、
ケープの両サイドに、テール用の素材としてピッタリの張りのある部分がありまして、
ベテラン諸氏は、こぞってこれを使っておりました。
ところがメッツもだんだん品種改良されていくにつれて、
この硬くてテールに使える部分がなくなってしまいました。
ドライ用のハックルとしては、この部分は邪魔だったのでしょうね。

その次に流行したのは、皆さんも良くご存知のムース、
中空で浮力があり、大きなドライフライに使える長さも充分にあります。
またフライを水面に支えるための張りもありますので、ずいぶんこれにはお世話になりました。
ただ、残念ながらこの素材、2〜3匹魚を釣りますと折れてしまいます。
強度不足でもろいため、フライの耐久力が今一歩でした。

その次によく使ったのは、化繊でできたテール材、
ちょうど7〜8年前のことだったでしょうか。
自然を大事にしよう、フライのマテリアルも天然素材じゃなく、化学繊維を使って、
貴重な野生の生き物をフライに使うのは止めにしよう。
などという動きがありまして、テール素材も化繊系のマテリアルが発売されるようになり、
これをしばらく使っておりました。

この素材、最初から先端が揃えてありますので、タイイングには極めて便利。
切ってフックに乗せるだけ。
また長さも張りもあり、何匹釣っても壊れませんので、強度も充分、
とても重宝するマテリアルです。
でもね...
なんだか物足りません、味わいがないのね。
フライには、やはり生き物らしさが必要なんでしょう。
いざというときに、自分のフライを自信を持って使えるかどうかといえば、
長い間の経験に裏打ちされた、そのフライに対する信頼性があってこそでしょうが、
魚を釣る前に、まずはそのフライで人間を釣らなければいけません。
そのフライの持つ表情に、何処か惹かれる部分がなければ、
不漁の日々が続いた時に、そのフライを使い続ける精神力が持たないように思えます。

フライの表情の一番肝心なところは、結局は偽者であるフライを、
いかに生き物っぽく見せるかに掛かっているように感じます。
そういう点では、たとえばパラシュートのウィングは、
魚に直接見えず、水面でぼんやりとシルエットを作ってくればOKなので、化繊系でも構いません。
一方、テールはハックルと同様に魚に直接見えてしまう部分ですので、
できれば天然素材で生き物らしさを表現したい。
そう思って、また他のマテリアルを探し始めました。

ずっと試行錯誤が続いていたある日のこと。
たまたま入荷したレネハロップ氏の不朽の名作、ノーハックルサイドワインダーを眺めていると、
テールの素材に見慣れないものが使ってあります。
縞しま模様で、いかにも生き物っぽいテール。
探していたものはこれだ!
頭の中で何かが閃いて、
さっそく勝俣さんに訪ねてみると、材料はコックドレオンを使っておられるとのこと。
おまけにコックドレオンは入手難の時代を通り過ぎて、
ホワイティングでも、ちょっとづつ供給が出来るようになっております。
すぐに入手して使ってみました。
結果は...最高でしたよ。
釣れる魚の数も、またサイズも大きくアップ、ようやく最良のテールに巡りあうことができました。

九頭竜の職漁師のハックルと、アメリカの稀代の名人のテール、
東と西の、過去と現代の知恵が結合して、やっと一つのパターンが形になりました。

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さて本日は、お昼の3時過ぎにいつもの庄川水系の名もない谷に来ております。
天気はこんな感じで、



どんよりとして、降ったり止んだりの繰り返し。

”雨の日と月曜日はいつも私を憂鬱にさせる”
拒食症でこの世を去ったカレンの歌を口ずさみながら、カッパを着込んでエイッと入溪。
憂鬱な日になるかどうか、とりあえずやってみましょう。

今日はスポット打ちも遠投も可能な、スコットのG2 883/4を持ってきました。
釣り上がりはショートリーダーでスポット打ち、
プールではリーダーを長くしてドラッグフリーで流す、
どちらの状況にも使いたい場合には、G2 883/4は最高の1本です。
リーダーの先端にフロロの6Xを50cmほどセットして、
フライは#13 キハダ君にお願いしましょう。

最初の1時間はまったく当たりナシ、
雨の勢いがどんどん強くなって来て、魚の反応が悪くて苦戦しております。
”このままだと、本当に憂鬱な日になってしまうなぁ、でも今日は火曜日だから大丈夫だぜ、”
根拠も何もないのに、自分を奮い立たせておりますと、
やはりオイラはラッキーさん、雨が上がりましたよ。
とたんに憂鬱な気分は吹っ飛びまして、おまけに魚の居場所が分かり始めてきました。
雨が数時間続きましたので、イワナ達はなんとヒラキに出ております。
こんな早い時間帯にヒラキに出てくるなんてと、ちょっとびっくりしますが、
これはさっきまで続いていた雨のおかげです。
雨の日は憂鬱ではないのですねぇ、釣り師にとってみれば...

水深が30cmもないようなヒラキにそっとフライを落とすと、



ドドーンと出ました29cm。1cm足りませんが、まだ早い時間帯なので良しですね。
魚の居場所が分かればしめたもの、同じようなヒラキをずっと探っていって、
5時半までに10匹ゲット、上出来です。

その後のイブニングはプールでライズを狙う作戦で、
リーダーをチェックしたり、ティペットを新品に交換したりして、
ゆっくりと時間が通り過ぎるのを待っておりますと、
やがてポツリ、ポツリとモン様のハッチが始まりました。
モン様のハッチが出ればキハダ君でいただきなのですが、
あいにく本日ベンチ入りのキハダ君達は、
どれもウィングの高さが足りなくて、視認性がちょっと落ちるものばかり。
ずっと通っている、一色川専用のキハダ君達をボックスに入れてきましたが、
彼らのウィングの高さは、ちょっとばかり抑え気味に作っております。

イブニングの時間帯には、人間にも魚達にもウィングの高さが重要です。
どちらからも見えやすいように、ウィングを高くして、光量不足を補うのがイブニングの常道ですね。
ただし、たとえば一色川のように水流が複雑に流れるところでは、
フライの姿勢を維持し易いように、キハダ君のウィングの高さを抑えて作っております。
高すぎるウィングを持ったフライは、一色川ではすぐに水流に巻き込まれてしまいますので、
ちょっとした工夫が必要です。どうぞお気をつけ下さいね。

そこで、大き目の#11ラストホープBOをピンチヒッターに送りましょう。
これならウィングが高くて、薄暗い状況のプールの中でも、よく見えますね。
それにプールなら、水の動きはゆったりと流れますので、
ウィングの高いフライでも、姿勢は崩れません。
左側でモン様のダンがバッサリ食われましたので、すぐにフライを水面に落とすと27cmゲット。
真ん中でもライズがありましたので、すかさずそこにフライを投げると28cmゲット。
ちょっとづつサイズが上がってきて、期待が高まります。
前回も尺サイズが出た右側にフライを放り込むと、ピチャリと小さなライズ。
うっかりして、思わず右手が動いてアワセてしまったので、
フッキングした20cmのチビをそっとリリースして様子を見ていると、
なんだか大きいのがいそうな雰囲気が漂ってきます。
チビを釣ってしまうと、たとえその近くに大物がいても沈黙してしまうのですが、
大丈夫、バレなかったようですね。

もういちどティペットをチェックして、こっそりフライを置いてみますと、ガボッと出ました。
引きが強くて良いサイズ、これなら尺は越えているでしょう。



尻尾の太い精悍な表情のオスでした。
強い引きでしたので、35ぐらいはあるかなと思っていたのですが、
メジャーをあてると30.5cm、ギリギリサイズでしたね。
でも、尺イワナを釣れば帰れます。
リベンジを何とか果たして、
”雨の日と火曜日は最高”でした。

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さて、今回使ったフライは、
九頭竜の職漁師の伝承パターンをヒントにした、30年近く使い込んでいるパターンです。
名前を考えるにあたって、
なんせ九頭竜水系では、50cmのアマゴも70cmのイワナもテンカラで釣るお国柄ですので、
職漁師の武勇伝を盛り込んで”OLD SAGA”にしようかな、
それともそのままの”バジャーケイヒル”にしようかなどと、アレコレ考えたのですが、
結局職漁師の言葉をいただいて、”キハダ”に決めました。

キハダはメインが#13で、
春先にヒラタやクリーム系のコカゲがハッチする時には、#15〜17を使っております。
今の季節には、18:00までをこのパターンで釣り、
大物の気配がある場合には、#11のラストホープBOにチェンジすることがございますが、
フライの交換が面倒な時は、そのままこのパターンを使います。
老眼が進んでフライの交換がおっくうになりましたので、今回はそのままこのパターンで続けましたが、
平均サイズのイワナやアマゴはもちろん、尺サイズの大物にもOKで、
九頭竜水系でも庄川水系でも、過去に相当数の尺サイズのイワナやアマゴを釣っております。

- #13 キハダ -


フライを巻く時間のないお方、
あるいはこの地方で効果的なドライフライをお探しの方、
ぜひ当方のキハダをお試し下さい。

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